本記事では、英国を代表するオーディオブランドBowers&Wilkins(B&W)から日本で13年ぶりに登場したサウンドバー、Panorama 3をレビューします。Dolby Atmos対応で、音場補正など調整しなくてもすぐに最適な音質で映画やゲームを楽しめます。
自宅で手軽にテレビの音質強化をするなら、サウンドバーですよね。僕はAVアンプで映画の視聴環境を整えましたが、アンプとスピーカー、ケーブル選定などこだわりだすとキリがありません。その点でサウンドバーは置いてテレビと接続するだけで、気軽に高音質化できます。
ただ、サウンドバーでAVアンプとスピーカーで組んだ環境に匹敵する音質を実現するのはかなり難しいです。テレビ下に設置する都合上ボディ内で使用できる空間は限られていますし、音質はある程度妥協が必要でした。
しかしPanorama 3は同社の高級スピーカー「800 Series Diamond」の開発チームが担当し、サウンドバーでも音質に妥協のない製品に仕上がっています。また、自動音場補正など面倒な設定不要で迫力のあるサラウンドを楽しめます。
この記事では、Panorama 3の特徴や実際の使用感など公式サイトにはない情報満載でお届けします!
- 音質を調整しなくても設置するだけでいい音が聴ける
- クセのないHi-Fiサウンドがサウンドバーで聴ける
- 高級感のあるエレガントなデザイン
- シンプルすぎるがゆえの拡張性のなさ
- 小音量時に音がこもって聴こえる
Panorama 3の概要
Panorama 3は主に下記の特徴があります。
- どんなインテリアにも美しく映えるデザイン
- 13個の独立したドライバーによる没入感のある空間オーディオ
- Bluetooth(aptX Adaptive)、AirPlay 2に対応
- アプリで簡単設定
元々初代のPanoramaはオーディオ販売店ではなく高級インテリア店や百貨店で販売されていたほどデザインにこだわったシリーズで、Panorama 3もシンプルで上品なデザインです。
昨今のハイエンドサウンドバーでは当たり前となっている自動音場補正機能やサウンド効果はなく、置いただけで精密にチューニングされた最適な音質を楽しめるようになっています。そんなサウンドは「800 Series Diamond」のチームが担当し、サウンドバーなのにピュアオーディオのような上質なサウンドを味わえます。
ちなみに800 Series Diamondのスピーカーは1個50万から300万円を超えるモデルもあります。
主な仕様はこちらです。
外形寸法 | 幅:1210 mm 高さ: 65 mm 奥行き: 140 mm |
正味重量 | 6.5 kg |
特長 | HDMI eARC Dolby Atmos® 3.1.2システム Dolby® True HD Bowers & Wilkins Music アプリ Alexa対応 Bluetooth Spotify Connect Airplay 2 |
ドライブユニット | 19 mm チタンドーム・トゥイーター x3 50 mm ウォーブン・グラスファイバーコーン・バス/ミッドレンジ x6 50 mm ウォーブン・グラスファイバーコーン・アトモスドライブユニット x2 100 mm ロープロファイル・バスユニット x 2 |
周波数レスポンス | 43 Hz- 48 kHz |
接続端子 | HDMI eARC x 1 光デジタル入力 x 1 イーサネット(RJ45) x 1 USB-C(サービス用) x 1 |
Bluetooth対応コーデック | Bluetooth 5, class 2 AptX™ Adaptive AAC SBC |
付属品は下記のものが揃っています。
- スピーカー本体
- 壁掛け用取付金具
- 電源ケーブル
- HDMIケーブル
- 説明書
付属のHDMIケーブルは、HDMI2.1に対応したハイグレードなウルトラハイスピードケーブルです。
物理リモコンはありませんので、初期設定を含めiOS・Androidに対応した「Music | Bowers & Wilkins」で操作します。
設定項目がシンプルなので、物理リモコンがなくても特に不便を感じないんですよね。
外観レビュー
筐体は全面がパンチングメタルになっており、非常にエレガントな外観です。幅が1,210mmとサウンドバーとしては大きい部類なのですが、横から見ると六角形のようになっており圧迫感のないモダンなデザインです。キャビネットの全高が65mmに抑えられているので、テレビの前に置いても画面に干渉しにくくなっています。
通常サウンドバーには重低音再生用のバスレフポートが空いているのですが、Panorama 3は密閉型でバスレフポートはありません。その分、サブウーファーの筐体に容積の大部分を占める空気室を与えることで深く伸びやかな低音再生を実現しています。
物理ボタンはなく、Panorama 3のガラスパネルに手をかざすとボタンが浮き上がります。ほとんどリモコン操作で済むので、必要な時だけ浮かび上がる仕様は嬉しいですね。
上部から見ると、薄っすらとスピーカーユニットが透けて見えます。スピーカーは、Dolby Atmos対応の3.1.2ch構成になっています。前方に3chのスピーカーを配置し、上面には最適な角度に調整されたDolby Atmosイネーブルドスピーカーを配置。そしてその内側に、サブウーファーが上向きで配置されています。
3.1.2chはフロントスピーカーが3組、サブウーファーが1組、イネーブルドスピーカーが2組あることを表しています!
一見楕円のスピーカーユニットに見えますが、13個すべてのスピーカーは円形ドライバーを採用しています。通常サウンドバーではコンパクトな中で面積を稼ごうと楕円形のスピーカーユニットを採用することが多いのですが、高速なピストンモーションなどで歪が出やすくなるためあえて円形ドライバーを使用しているとのことでした。
接続端子は下記の4系統が揃っています。
- HDMI eARC x 1
- 光デジタル入力 x 1
- イーサネット(RJ45) x 1
- USB-C(サービス用) x 1
USB-Cは、修理サービスなどのサービス用で音声入力はできません。また、HDMI端子はARCにも対応しています。日本メーカーのサウンドバーによくあるHDMI出力はありません。
今までヤマハのYAS-108というエントリー向けサウンドバーを使っていたのですが、比較するとサイズが約40cm近く違います。筐体が大きいほど搭載できるユニット数も音の広がりも上がるので、実際の音質が気になりますね。
使用感レビュー
Panorama 3をしばらく使ってみましたので、実際の使用感をレビューしていきます。
設置性
まず、TVスタンドにPanorama 3を設置してみました。サウンドバー台の幅が100cmだったので、左右に約10cmほどはみ出しています。サウンドバーとしては大柄なので、設置場所の測定はあらかじめしておいたほうがいいですね。
また、僕のように左右が浮いた状態ではサウンドバー本体を支えるゴムが中央しか機能していません。そのため、コルク製のコースターを底に敷いています。
できれば、スピーカー用のインシュレーターがあると確実に共振を抑えることができるのでいいかなと思いました。
少し高さも欲しかったので、その後ハヤミ工業のTIMEZというスピーカースタンドを導入しました。こちらにしたところ高さも上がったからか音の定位が良くなり、重低音がスッキリしたので声の通りも良くなりました。
音質
実際にPanorama 3でいくつか映像ソースを聴いてみました。まずYouTubeでボサノバを聴いてみます。普段AVアンプとブックシェルフスピーカーで組んだ環境で音楽を聴いているので、正直なところ期待していませんでした。
ただ、ピアノの音が鳴った瞬間、思わず「おおっ!」と声が漏れるほど立体感のある表現でびっくりしました。弦楽器の倍音も美しく、音にリアリティがあります。サウンドバーというよりは、Hi-Fiスピーカーで聴いているような自然な音、どちらかというとAVアンプとブックシェルフスピーカーで組んだ環境の音に近かったんですよね。
サウンドバーならバスレフ特有の「ドンドン」という重低音で迫力を演出するモデルが多い中、バスレフがないPanorama 3は重低音の中にもさらに階調が見られる表現力の高さでエントリー機からの買い替えでも満足できる音質と感じました。トランペットなら奏者の息遣いが、アコースティックギターなら弦を弾く音だけではなくボディー内で共鳴してミックスされる音まで細かく映写してくれます。
次に、「スパイダーマン・ファー・フロムホーム」を観てみました。序盤の車が左から右に横切る演出では、左右の音のつながりが自然でリアリティを感じました。また、メキシコ・イステンコを舞台にしたオープニングでは、空から人が降ってくる演出でかなり迫力のある爆発音を感じることができました。横だけではなく、上から下の音場も広いです。
最後にアニメの「天気の子」を観てみました。序盤の雨の降る音がかなり細かく聴こえており、エントリー向けのサウンドバーでは聴こえなかった微細な音のニュアンスを表現してくれます。鳥居をくぐったあとの空に舞うシーンでは、風のなびく音の迫力と合わせてピアノのインストゥルメンタルがきれいに流れ、サウンドバーの存在感を忘れるような立体感でした。
一通り音を聴いてみましたが、映画でも音楽でもクセのない立体感のある音質で、サウンドバーでここまで満足できる音が出せるのは驚きました。
アプリの設定はかなりシンプル
Panorama 3には物理リモコンが無いので、細かい操作はすべてアプリで操作します。
アプリの設定項目はかなりシンプルで、音質調整は高音と低音の調整のみです。自動音場補正もありませんが、立体音響で壁の反響を使わないので設置しただけで迫力のある音を楽しめるようになっています。細かく調整できる方がいいという方もいらっしゃいますが、プロが緻密に調整した音をすぐ楽しめるのがPanorama 3の美点と感じています。
また、アプリ経由でdeezerやSoundCloudなど音楽ストリーミングサービスの再生も可能です。AirPlay 2を使えばApple MusicやYouTube Musicの音楽も流せますし、Spotify Connectなども利用可能です。Panorama 3はHi-Fi的で音楽再生も向いているので、スマートフォンから音楽を流すのも楽しいですね。aptX Adaptiveで接続すれば48kHz/24bitのハイレゾ再生も可能で、より音質にこだわって楽しむのもいいですね。
気になったデメリット
Panorama 3をしばらく使ってみて、気になった部分も紹介します。
シンプルすぎるがゆえの拡張性のなさ
Panorama 3はサブウーファーがなくても単体で十分な重低音を出せる設計のため、仮に重低音が足りなかったとしてもあとからサブウーファーを足すことができません。その点では、BOSEやSONYはサウンドバーで使えるサブウーファーを用意しているので、拡張性は他社のサウンドバーのほうが高いです。
また、音質調整が高音と低音しかないため、例えば「オーディオエンハンサー」のように人の声をより聴き取りやすくする機能もありません。
ただ、Panorama 3を使っていて重低音の不足を感じたことはありませんし、人の声も聴き取りやすいです。外付けのサブウーファーをつけると低音域に定位が生まれてしまい、サブウーファーの設置位置によってサウンドバーとの楽曲定位がおかしくなることもあります。そういった意味で、サウンドバー単体で完結するのは音質面でも理想的といえます。拡張性は他社の最新機種に劣りますが、逆を言えば「これ以上何も足す必要がない」ともいえますね。
シンプルにPanorama 3のチューニングに任せれば良し!
小音量時に音がこもって聴こえる
ある程度音量を上げれば重低音、音の広がりも満足できるのですが、音量を絞ると音がこもって聴こえます。これはPanorama 3だからというより、サウンドバー全般に言えます。Panorama 3が例外ではないということです。Panorama 3はメディアでもかなり評判がよく音質に欠点がなさそうですが、深夜などで音量を絞った時はテレビ内蔵スピーカーと大差がありません。
例えば「オーディオエンハンサー」や「クリアボイス」と言われる声をより聴き取りやすくする処理が入っていれば変わっていたかなと感じています。
ただ、イコライザーで高音域をある程度上げればマシになります。小音量時でも声が聴き取りやすいサウンドバーなら、Polk AudioのREACTがおすすめです。評論家が自腹で購入するほどコストパフォーマンスに優れており、Voice Adjust機能で声も聴き取りやすくなるのでニュースやバラエティ番組を中心に見る方にはいいですね。
映像コンテンツをなるべく大きな音を出して楽しめる方は、これ以上の贅沢はありませんね。
まとめ:面倒な設定不要で最高の音質を楽しみたいならPanorama 3
B&W Panorama 3は、サウンドバーでありながらピュアオーディオの「800 Series Diamond」のチームが担当し、今までのサウンドバーを凌駕するようなサウンド体験ができます。
他社のサウンドバーなら音場補正など細かな設定が必要ですが、Panorama 3ならテレビと繋いだだけで完結するので設定もシンプルです。
- 2万円前後のサウンドバーからの買い替えを検討している方
- 面倒な設定無しで最適な音質を味わいたい方
- AVアンプなど本格的なシステムを組まなくてもHi-Fiサウンドを楽しみたい方
- 家族で映画館のような迫力を楽しみたい人
高価ですが、高級オーディオ譲りの音質で自宅を映画館にして楽しみたい方はぜひ検討してみてください!