今回レビューさせていただく製品はSIMGOTの新製品、EM2R(Roltion)です。
結論から申しますと、女性ボーカル主体のノリの良い楽曲にかなり合うイヤホンに感じました。5色のカラーバリエーションから選択でき、金属と透明素材の組み合わせによるアクセサリーのようなおしゃれな外観から女性に特におすすめです。
また、すでにEM2をお持ちの方も、音のキャラクターが若干異なるので使い分けも十分にできそうな印象です。EM2とEM2Rのケーブルは0.78㎜ダブルピンでお互い共通規格なので、2台持ちもありですね。
- 本体、付属品、箱を含め高級感があり所有欲を満たせる。
- モニターイヤホン並の高解像度かつ高音の抜けもよく低音の制動もよく効いているため聴き心地が良い。
- リケーブル対応なので断線しても交換できる。
- この内容で実売価格16,800円なら安い。
- 高い解像感かつ高音のピークが高いため聴く楽曲によっては聴き疲れしやすいかもしれない。
- 重低音重視の人は他のイヤホンの方がいい(SOLID BASSやEXTRA BASSシリーズなど)。
SIMGOT EM2R(Roltion)の概要
EM2Rは、以前レビューさせていただいたEM2の改良版です。
EMシリーズはパッケージに「洛神」と書かれていますが、ここで言う「洛神」は古代中国の伝説に出てくる水と川を司る洛水の女神です。ちなみに無双OROCHIシリーズで登場する「伏儀」の娘さんです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%9B%E5%AC%AA
SIMGOT EM2R(Roltion)のスペック
ドライバー構成 | ダイナミック型とバランスド・アーマチュア型によるハイブリッド型ドライバー構造 |
インピーダンス | 32Ω |
ヘッドホン感度 | 109dB/mW |
周波数応答の範囲 | 20-20000Hz |
歪み度 | <1% 101 dB |
チャンネルバランス | <1.5 dB (1000Hzで) |
装着方法 | フレキシブルな耳掛け式 |
数値上では、前作のEM2がインピーダンス10Ω、感度101dB/mWという構成でEM2Rではインピーダンス32Ω、感度109dB/mWと変更がされました。
一般的に抵抗値が低ければ低いほど音量が取りやすいので、高級なDAPではないスマートフォンでも十分にドライバーを駆動しきれるというメリットがあります。その反面、機器によっては「サーーッ」というホワイトノイズが出やすく、デジタルアンプを使用している際に特に気になりました。
EM2Rはその抵抗値を30Ωに上げることでホワイトノイズの発生を抑え、かつスマートフォンでも音量が十分取れるように調整してあるためより幅広い機器で高音質な音で聴けるようになりました。
SIMGOT EM2R(Roltion)のカラーバリエーション
EM2Rは、現在5つのカラーバリエーションが販売されています。どの色も透明感があり、男性女性問わず様々な服装にマッチしそうです。
SIMGOT EM2から向上した点
EM2Rは前作のEM2の改良版とお知らせしましたが、EM2から改良された点はおもに下記の4点です。
- 新たに金型を作り、ケーシングの輪郭線をよりなめらかな角度に改善し、長く装着しても痛くなりにくい。
- EM2R振動板の材質をEM2の高分子チタンメッキからカーボンナノチューブに進化。それにより低域の質感と動態を強化し、音の繊細な響きを向上。
- KNOWELS バランスド・アーマチュア・ドライバー33518を搭載し、更に「エアダクト」を除去することにより高域のエネルギーを合理的に分散させると同時に、高域伸びと鮮やかさをそのまま残すことに成功。
- インピーダンスが10Ωから32Ωに上がり、音に含まれる微細なノイズの除去がされている。
KNOWELS 33518は、FiioのFH3やIKKO OH10など、2〜3万円台クラスのイヤホンに搭載されるドライバーです。
高域が澄んでいるかつ音が刺さりにくいドライバーですね。さらにそこからエアダクトを除去することで、高域の伸びと鮮やかさを残しつつ音場を広げることに成功しているということです。
カーボンナノチューブ振動板はJVCが特に力を入れてヘッドホンに採用していた記憶がありますが、ダイアモンドの2倍の硬度がありながら高い復元性、柔軟性を持っているので比較的全音域においてクリアな音再現を得意としています。
SIMGOT EM2R(Roltion)の開封レビュー
では早速開封していきます。
まずEM2Rが届いたとき、はじめに感じたのがパッケージのクオリティの高さです。洛神が描かれたこのパッケージを見て、どこかファイナルファンタジーのような、豪邸の壁に立てかけられていそうなタッチで感動しました。
開封していくと、保証期間を3ヶ月延長できるカードが入っていました。このカードは台紙で立てかけられる仕様です。すごくおしゃれですね。
本体を含め、付属品はこれだけ揃っていました。
- ケーブル
- イヤホン本体
- ケース
- バッジ
- 2種類のイヤピースS/M/Lサイズ
- 延長保証カード
- 着用説明書
EM2Rの外観レビュー
では、外観をレビューしていきます。本体側面のスピンドル加工や、透明な筐体は前作EM2から引き継いでおりおしゃれですね。
本体はEM2とあまり変化がないように感じましたが、実は微妙に違っています。例えばEM2の筐体はおにぎりのように少し角張った形状なのに対し、EM2Rは卵型のゆるやかな形状に変わっています。
実際の装着してみましたが、この形状変更が効いているのか長時間の装着でも痛くなりにくく感じました。
EM2を使っていてちょっと耳に合わなかったという方にもおすすめです!
付属のケースは、前作の茶色から青色に変わっていました。EM2Rは「青は藍より出て藍より青し」をテーマにしており、それに則ったものと思われます。「弟子が師匠の学識や技術を越える」という意味を持つことわざですが、EM2Rはまさに先代のEM2を継承しつつ超えるという意識で作られていることが感じ取れました。
高級イヤホンにケースが付属することは珍しくないのですが、EM2Rのケースは合皮製で縫製も丁寧にされており、かなり高級感を感じました。
ケーブルは4本銀メッキワイヤの編み込みタイプケーブルを採用しています。銀メッキはケーブルの腐食防止だけでなく、高音域のヌケ感の良さにも作用してきます。400DのデュポンKevlar ケブラー繊維を採用し、耐久性を高めているということでした。
見た目の綺麗さはもちろんのこと、本体とケーブルをつなぐピンの部分、ケーブルが2つに分岐する根元部分、3.5mmメッキプラグの根本部分など、耐久性が低いとされている部分にしっかり金属を使用し耐久性を高めていることに感心しました。
ケーブルタイもついていますので、ケーブルをまとめやすい部分もいいですね。「芸術と科学へ敬意を」と書かれています
イヤーチップは、中高音域の抜けを良くする「EartipⅠ(通透塞)」と低音域を強くする「EartipⅡ(均衡塞)」の2種類があります。2つのイヤーチップの音質比較は、このあとの音質レビューで詳しく見ていきます。
こちらはおまけのバッジです。洛神をイメージして作られています。金属製で重厚感もあり、バッグに付けてもいいですね。
気に入ったので、早速ひらくPCバッグにも付けてみました。元々パンチングの穴が空いているので、ピンバッチとの相性も抜群です。
イヤホン以外のアクセサリーも力が入っていますね!
SIMGOT EM2R(Roltion)の音質レビュー
ではここからは、実際にいくつか音楽を聴いて音質をレビューしていきます。実は前作のEM2は、「Eartip1では空間の表現と低音域の迫力が足りない、Eartip2では透明感のある高音がマスクされせっかくのEM2の良さが出し切れない」という理由で純正イヤーチップを使わずにCP100というイヤーチップを使用していました。今回は純正イヤーチップで聴いてみます。
- iPhone XS
- mora qualitasのハイレゾ音源を使用
- DACはOWL-CBLTF3502を使用
バラード:まずは家入レオさんのチョコレートを聴いてみる
なぜ最初に家入レオさんのチョコレートを聴くかというと、前回のEM2のレビュー時に聴いたときに最も良かったと感じた楽曲だからです。
「EartipⅠ(中高音重視)」では、ボーカルが前に出てくる印象で、特に鈴の音、鉄琴の音がきらびやかに聴こえました。EM2と同じく家入レオさんの透明感のある声をしっかり再現しています。高音の抜けがよく透明感のある見晴らしのいい音である一方、モニターライクでバラードなら低音がもう少し欲しいといった印象です。
「EartipⅡ(低音重視)」ではギターの音が前に出てきて、ボーカルは若干引っ込みます。こちらの方が温かみを感じられる音色で、バラードに向いている印象です。
モニターライクな音と書きましたが、EM2Rは余計な付帯音がないからか有線で接続したSONY WH-1000XM4の音が曇って聴こえるぐらいです(擁護するとWH-1000XM4はワイヤレスで本領を発揮するので、付属のケーブルはおまけ程度かつスマートフォンではなく高出力なDAPなら違うかもしれません)。
音場(音の出る空間のこと)はヘッドホンの方が広いのですが、僕はM40xのようなモニターヘッドホンで音楽を聴くので、音の質自体はそれにかなり近いものを感じました。ただその分若干聴き疲れしやすい印象です。
エレクトロ:Daft Punk – Get Lucky (feat. Pharrell Williams & Nile Rodgers)
e☆イヤホンさんなど、DAPの試聴機に大体入っている楽曲「Daft Punk – Get Lucky (feat. Pharrell Williams & Nile Rodgers)」も視聴してみました。
この楽曲は重低音が売りでもあるので、「EartipⅡ(低音重視)」で聴いてみました。
まず、音の定位がしっかり分かるように感じました。具体的には、中央にボーカル、右側で手を叩く音が聴こえ、左側でギターの音が聴こえるといった、音の出どころが把握できる点に感心しました。この楽曲は中盤から手を叩く音が左右に分離しますが、この聴き分けもしっかりできました。
ベースの音も制動が効いた「ドッ、ドッ」という音で、非常に満足の行く低音が出ています。ボーカルの声も澄んでおり、モニターイヤホンのような解像感を出しつつ、音楽的に楽しめる絶妙なチューニングに感じました。
逆にいえば、重低音をとにかく聴きたいという方にはおすすめできません。
J-POP:欅坂46の世界には愛しかない
EM2でも聴いた、欅坂46の「世界には愛しかない」も聴いてみました。女性ボーカルかつ疾走感のある楽曲なので、EartipⅠ(中高音重視)で聴いてみました。
まず、前奏のピアノの音が「そこまで伸びるか」というぐらい高音が出ます。非常に澄んでおりEM2より質の高さを感じます。
また、序盤のスローテンポなピアノソロからテンポチェンジしてイントロへ移るわずかな無音の時間に、かすかに時計の「カチカチカチ」という音が聴こえるのですが、この音もEM2と同様にしっかり聴き取ることができました。ちなみにこの音はearpodsなど安いイヤホンだと聴こえません。
ギターのカッティングの音も歯切れがよく、気持ちよく聴くことができます。
ただし音数が増えてくると音場が飽和してくる印象で、ここは流石にヘッドホンに分があると感じました。
結論:モニターイヤホン並の解像感かつノリの良さがいい
EM2RはEM2に比べ高音の抜け、低音の質が向上し、より元気でパワフルな音質に仕上がっていました。
余計な付帯音がないため解像感も高く、音を聴き分けることも楽しめるイヤホンです。女性ボーカルは特に澄んで聴こえるため、アイドルソングや女性ロックバンドなど女性ボーカル主体でノリの良い楽曲にマッチします。
前作のEM2はEM2Rより少しおとなし目なキャラクターなので、聴き疲れはしにくい印象でした。
なのでバラードはEM2の方が聴きやすい印象で、そういった意味で、EM2とEM2Rは使い分けも十分できると考えています。