本記事では、DENONのAVアンプAVR-X1700Hをレビューします。8K Ultra HD、HDR10+、eARCなどの最新規格への対応と高音質を兼ね備えた7.2ch AVサラウンドレシーバーです。
今までSONYのSTR-DH590というAVアンプを使用しており、エントリー向けとはいえ満足していました。しかし2018年発売モデルということで、ゲームではHDR出力ができない、設定画面はすべて英語で操作しづらいということで乗り換えを検討していました。
そんな時に見つけたのが、DENON AVR-X1700Hです。1700Hから、DENONの“音の門番”であるサウンドマスターに就任した山内さんが開発に深く関わっています。
ピュアオーディオみたいな音がAVアンプで聴けたらすごそう。
そんな期待感から導入したのですが、結論から言うと2022年のベストバイにふさわしいほど満足しています。価格.comプロダクトアワードのオーディオ部門で金賞を受賞している2022年で最も注目されているAVアンプなので、評価も高いです。
映像の視点では、8K Ultra HD、HDR10+など最新の規格に対応し、きれいな映像で映画やアニメなどのコンテンツを楽しめます。オーディオの視点では、Dolby Atmos、DTS:Xに対応し、広がりのある音質を楽しめます。ゲームの視点では、PlayStation 5やXboxも対応しているHDMI 2.1の新機能「ALLM(Auto Low Latency Mode)」、「VRR(Variable Refresh Rate)」、「QFT(Quick Frame Transport)」、「QMS(Quick Media Switching)」に対応しています。
呪文のような横文字が並びましたが、一言で言えばエントリー機なのにハイエンドモデル並みに機能が充実しているAVアンプです。AVR-X1700Hを導入してから、映画やゲーム、ジャズ音楽の鑑賞が毎日の楽しみになりました。
そんな今の僕に欠かせない相棒になったAVR-X1700Hがどんな特徴を持っているのか、実際の使用感はどうなのかなど公式サイトには載っていない情報満載でレビューしていきます。
- 8K Ultra HD、HDR10+など最新の規格に対応している
- Dolby Atmos対応で迫力のある音を楽しめる
- HDMI端子が6つあるため多くのデバイスを接続できる
- HEOSで音楽ストリーミングサービスの音源もAirPlay 2経由で楽しめる
- ヘッドホンでもサウンド効果を適用できる
- 設定画面の解像度が低い
AVR-X1700Hの特徴
AVR-X1700Hは、主に下記の特徴があります。
Audio – 上位モデル譲りの高音質設計
- 最大出力175Wの7chディスクリート・パワーアンプ(6Ω、1kHz、THD 10%、1ch駆動、JEITA)
- Dolby Atmos、DTS:X、MPEG-4 AACに対応
- Dolby Atmos Height Virtualizer、DTS Virtual:Xに対応
- シンプル&ストレートを徹底したプリアンプ、ボリューム回路
Video – 8K Ultra HD / HDR10+ / eARCに対応
- 3入力 / 1出力のHDMI端子が8K / 60Hz、4K / 120Hzに対応
- 映像体験を革新するHDMIの最新機能をサポート
(HDR10+ / Dynamic HDR / HDR10 / Dolby Vision / HLG / BT.2020 / VRR / QMS / QFT / ALLM / eARC) - 8Kアップスケーリング機能
Network – HEOSを搭載
- 幅広い音楽ストリーミングサービスに対応(Amazon Music HD / AWA / Spotify / SoundCloud)
- 5.6 MHz DSD&ハイレゾ音源対応(ミュージックサーバー& USBメモリー)
- インターネットラジオ(TuneIn)、AirPlay 2、Bluetooth®(送受信)、Amazon Alexa音声コントロール対応
10万円を切る価格で、最新規格への対応能力はトップクラスです。
搭載パワーアンプ数 | 7ch |
定格出力 (8Ω、20Hz ~ 20kHz、THD 0.08%、2ch駆動) | 80W+80W |
実用最大出力 (JEITA: 6Ω、1kHz、THD 10%、1ch駆動) | 175W |
適合インピーダンス | 4 ~ 16Ω |
周波数特性 | 10Hz ~ 100kHz (+1-3dB、ダイレクトモード時) |
S/N比 | 98dB (IHF-A、ダイレクトモード時) |
無線LAN | ネットワーク種類(無線LAN 規格):IEEE 802.11a / b / g / n / ac準拠(Wi-Fi® 準拠) セキュリティ:WEP 64bit、WEP 128bit、WPA/WPA2-PSK(AES)、WPA/WPA2-PSK(TKIP)、WPA3-SAE(AES) 無線周波数:2.4GHz / 5GHz |
Bluetooth | バージョン:4.2 対応プロファイル: 受信: A2DP 1.3.2、 AVRCP 1.6.2 送信: A2DP 1.3.2 対応コーデック:SBC 周波数帯域 / 送信出力 / 通信距離:2.4GHz 帯域 / Class 1 / 約30m (見通し距離) |
HDMI端子 | 入力×6 ※ HDMI 4 / 5 / 6:8K60AB / 4K120AB(最大40Gbps)対応 出力×1 ※ 8K60AB / 4K120AB(最大40Gbps)対応、eARC対応 |
アナログ映像入出力端子 | コンポジット入力×2、コンポジット出力×1 |
音声入出力端子 | アナログ音声入力×2、PHONO入力(MM)× 1、光デジタル入力×2、サブウーハープリアウト×2、ヘッドホン出力×1(フロント) |
その他の入出力端子 | Network×1、USB-A×1(フロント)、FMアンテナ端子×1、AMアンテナ端子×1、セットアップマイク入力×1(フロント) |
チューナー受信周波数帯域 | FM: 76.0 ~ 95.0MHz、 AM: 522 ~ 1629kHz |
外形寸法(フット、端子、つまみ、アンテナを含む) | アンテナを立てた場合:W434 × H215 × D339mm アンテナを寝かせた場合:W434 × H151 × D339mm |
質量 | 8.6kg |
電源 | AC 100V、50/60Hz |
消費電力 | 440W |
待機電力 | 0.1W (通常スタンバイ) 0.5W (CEC スタンバイ) |
付属品 | かんたんスタートガイド、保証書、リモコン、単4形乾電池×2、セットアップマイク、マイクスタンド、FM室内アンテナ、AMループアンテナ、ケーブルラベル |
デザイン
外観はいかにもAVアンプという出で立ちで、大きなモードダイヤルとボリュームダイヤルがあります。USBメモリも差し込めて、ストレージ内の音声ソースの再生もできます。
背面はスピーカーやHDMI入力の端子が密集しています。
僕はPlayStation、Xbox、Nintendo Switchに加えブルーレイレコーダー、Amazon Fire TV Stickも使うので、HDMI入力端子が6系統あるのは非常に助かっています。3つは4K/120p、残り3つは8K/60pの入力に対応しています。
スピーカー端子はすべてバナナプラグの接続に対応していますので、スピーカーケーブルの着脱がしやすくなっています。
AirPlay 2によるネットワーク機能も搭載しているため、アンテナも備えています。普段ゲームをするだけであればアンテナを立てなくてもいいのですが、HEOSで音楽をAirPlay 2経由で聴く時はなるべく立てるようにしています。
アンプの上部は中の基盤が透けて見えるほど放熱用のベントが空いています。アナログアンプは熱を発しやすいので、AVR-X1700Hに限らずAVアンプは基本的に天板がメッシュになっています。
実際にデスクに設置していますが、幅が434mmなので120cm天板のデスクならスピーカーも込みで余裕で設置できました。
使用感レビュー
約3ヶ月使ってみましたので、AVR-X1700Hの機能を紹介しつつ実際の使用感をレビューしていきます。
Audysseyによる音場補正
AVアンプといえばサラウンドのために音場補正が必要ですが、AVR-X1700HもAudysseyという音場補正システムがあります。音場補正を行うと、Dolby Atmosのサラウンド効果を使えるので映画やゲームがより迫力のある音質で楽しめるようになります。
音場補正のやり方は、音場補正用のマイクをアンプに接続して合計8箇所で音を測定するだけです。付属のスタンドを使用すれば、高さを維持しつつ音場補正がしやすくなるのでおすすめです。補正時間は合計で10分ほどかかります。
音場補正が完了すると、MultEQの設定ができるようになります。Dynamic EQをオンにしておくと、映画館のような音の迫力を味わえます。
また、有料にはなりますがiOS・Android対応のAudyssey MultEQ Editor Appを使用すればより細かく補正結果を調整可能です。僕は初期の測定結果で低音域がどうしても気に入らなかったので、Audyssey MultEQ Editor Appで少し低音域のカーブを持ち上げたらいい感じになりました。
映画やゲームで音質を検証
では早速、映画やゲームを観ながら音質を検証していきます。今回はスピーカーとしてPolk Audio ES15を使っています。ステレオ構成でも「スピーカーバーチャライザー」を搭載しているため、仮想でサラウンド効果が楽しめます。
DENON AVR-X1700Hは「MOVIE」「MUSIC」「GAME」「PURE」でシチュエーションに応じたサウンドモードが選択可能です。
まずはMOVIEの中のDolby Atmosで映画の「トップガン マーヴェリック」を観てみました。トップガンのテーマといえば「トップガン・アンセム」ですが、冒頭からしっかりと広がりのある力強い音の再現性です。
本編では、セリフが若干こもって聴こえたため「ダイアログエンハンサー(声を強調する機能)」を有効にしたところかなり聞きやすくなりました。特に海上に浮かぶ空母の離発着シーンは、戦闘機のジェットエンジンの迫力ある音が楽しめます。挿入歌の「デンジャーゾーン」も、テレビ内蔵スピーカーとは比較にならないぐらいノリがよく映画の高揚感も上がりました。
驚くのは、これがステレオ構成のスピーカーで楽しめるということです。本来サラウンドは多くのスピーカーが必要ですが、スピーカーバーチャライザーだけでここまで広がりのある音を楽しめるのはピュアオーディオでは味わえない感覚です。使っているスピーカー、Polk Audio ES15はDENONと同じディーアンドエムホールディングスなので、相性がいいのかもしれません。本音を言えば、近所迷惑になるぐらいもっと重低音を浴びたい気分ですが、そんな場合でもあとからサブウーファーを足せるのはAVアンプの柔軟性が光ります。
次にゲームもプレイしてみました。こちらはゲームのDolby Surroundモードでプレイしてみましたが、サラウンド効果の恩恵なのか敵の位置が把握しやすくなりました。また、ヘリコプターのプロペラの音や銃声、歩く雑踏などがまるで映画館で聴いているような迫力で、ゲームの世界に引き込まれました。ゲームは映像表現が第一だと感じていましたが、音が変わるだけでここまで没入感が違うのかと思うとAVR-X1700Hを導入して良かったと感じました。
ちなみに試行錯誤してAVR-X1700Hで映画やアニメを観るのに最適な設定もまとめてみましたので、もし購入されたら一度こちらの設定も試してみてください。
スピーカーで音が鳴らせない時はヘッドホンで聴ける
AVR-X1700Hはスピーカーでの迫力ある音質で楽しむのが醍醐味ですが、夜間などどうしても大音量で鳴らしにくいこともありますよね。そんな時はフロントパネルにある6.3mm標準ステレオジャックにヘッドホンを挿し込めば、スピーカーで音を鳴らさなくても映像コンテンツを楽しめます。
ヘッドホンでもドルビーデジタルなどサウンド効果の違いを楽しめるので、嬉しい仕様です。
音の解像感は音楽専用の据え置きアンプに劣りますが、映像コンテンツを楽しむには十分な音質でした。
HEOSによるAirPlay2でのネットワーク機能
映画やゲームだけじゃなく、AVR-X1700Hは音楽も楽しめる機能が満載です。その一つがHEOSです。HEOSを使えば、SpotifyやAWAなど音楽ストリーミングサービスの音源を、AirPlay 2経由でAVR-X1700Hに飛ばして聴くことができます。
iPhoneから気軽に好きな音楽をAVアンプで流せるので、寝る前などBGM代わりにして楽しんでいます。AVアンプなのでピュアオーディオと比較できるか分かりませんが、音にこだわりのある僕でも十分楽しめました。
気になったところ
AVR-X1700Hをしばらく使ってみて、気になる点もありましたので紹介します。
設定画面の解像度が低い
まず、2021年でまだ出て間もない新機種であるにも関わらず、設定画面の解像度が明らかに低いことです。実用上不便ではないのですが、8K出力に対応しているAVアンプの設定画面がフルHD解像度以下なのは気になりました。
設定画面の解像度の低さが気になったので、iOSとAndroidに対応したDenon AVR Remoteアプリを使用しています。
こちらは当然iPadのRetinaディスプレイに対応した高精細な設定画面になりますので、非常に見やすいです。また、映像を映したまま設定変更ができるので、最近はリモコンを使わずにiPad上で設定変更をしています。
AVR-X1700Hをおすすめできる人
AVR-X1700Hは、下記のような方におすすめできます。
- 予算10万円以内でAV環境を整えたい人
- 映画やアニメ、ゲームを迫力のある音質で楽しみたい人
- 多くのゲーム機やレコーダーなど機器を接続する人
僕はAVR-X1700HとスピーカーにPolk Audio ES15を選んで、実質10万円以内でAV環境を整えました。サウンドバーでもいいですが、僕の場合は多くの機器を接続したかったのでAVアンプが合っていました。
映画やアニメ、ゲームを迫力のある音質で楽しみたい方は、細かく設定を追い込めるAVR-X1700Hを使ってみることをおすすめします。
AVR-X1700Hをおすすめできない人
AVR-X1700Hは、下記のような方におすすめできません。
- 設置スペースがない人
- システムをシンプルにしたい人
例えばテレビでの使用にもeARC対応で向いているAVR-X1700Hですが、高さがありますのでラックに収まるか注意が必要です。下記の寸法でも収まるのであれば、おすすめできます。
- アンテナを立てた場合:幅434 × 高さ215 × 奥行き339mm
- アンテナを寝かせた場合:幅434 × 高さ151 × 奥行き339mm
また、AVアンプのみでは音を鳴らすことができないので、別途スピーカーを準備する必要があるなどサラウンド環境を整えるのにシステムが複雑になります。システムをシンプルにしたい場合は、サウンドバーがおすすめです。AVR-X1700Hと同じDENONのDHT-S217は、単体でDolby Atmosにも対応しサラウンドを楽しめるのでおすすめです。
まとめ:エントリー機でも性能や音質に妥協したくない方はAVR-X1700H
DENON AVR-X1700HはエントリークラスのAVアンプでも8K Ultra HD、HDR10+、eARCなどの最新機能を備えており、上位機種譲りの設計に仕上がっています。SONYのSTR-DH590から乗り換えて、かなり満足です。
サウンドマスターの山内氏がエントリー機として初めてフルに設計に関わっている機種ということもあり、音質もかなりこだわって設計されています。正直これ以上の音質を求めるなら、20万円を超えるより贅沢なパーツを使用した上位機種(AVC-X6700Hなど)じゃなければ満足できないでしょう。
言えることは、僕のホームシアターを次のレベルへアップデートしてくれたのは間違いないです。
予算は抑えたいけど機能や音質には妥協したくないという方はぜひお試しください。
なお、AirPlay 2といったネットワーク機能が必要ない方は、すべてのHDMI端子が8K/60Hz、4K/120Hzに対応しているAVR-X580BTがより安価に手に入るのでこちらもおすすめです。